【 5 】

もう死にたい、と思った。


これまで頑張ってきたけど、

とは言ってもたった一週間だけど、

でも今まで生きてきた中で

自分には絶対ありえないと思っていたことが

全部いっぺんに起こった。


本当にどうかしてる。


世界も、みんなも、・・・あたしも。

何もかもがおかしくなってる。



何より自分がこんなに弱い人間だなんて

思いもしなかった。







学校の帰り、大きな交差点に続く道を

誰にも見えないまま歩いた。

すぐ横を走るたくさんの機械の波に思い切り飛び込めば、

多分あたしは死ぬ事が出来る。


「死んだら全部終わってまうねんな」


交差点の曲がり角にあるパン屋から、

大好きだった甘いにおいがする。

通っていた幼稚園の黄色い送迎バスが

向こうからむかってくる。


とても遠いようで、ホントはものすごく最近の過去。

あたしが今まで重ねてきたたくさんのもの。




どうして、いつのまに、

あたしは全部なくしてしまったんだろう。




大型トラックが近づいて来るのが見えて、

もうとっくにおかしくなってるあたしは

赤く四角い信号に向かって

白黒の橋を渡り始めた。

トラックはクラクションを鳴らす事も

急ブレーキをかける事もせず、

まっすぐあたしに向かってくる。



もう誰も、あたしがいなくなることを悲しまない。



「楽しかった、・・・」

呟いた瞬間、瞬間。









世界は止まった。


















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