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情動による想像による創造 ―――― Emotion ⇒ Imagination ⇒ Creation = three-ion ――――
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「だからそうじゃないって」

「じゃあ何なのよ!」


若い頃ふたりでよく行った喫茶店の一番奥、

その二人掛けのテーブル席に私と裕正は向かい合っていた。


頼んだ二杯のコーヒーはとっくに冷めてしまったし、

周りにいた人はみんな入れ替わってしまっている。

お昼から夕方の今まで、ずっと居座っていたのは私たち二人だけだ。


「僕が言いたいのはそういうことじゃない」

「だったらどういうことなの? もっと分かりやすく説明してよ」


関係が気まずくなってから、裕正と何を話したって結局いつもここに戻ってくる。

真面目に聞けば、裕正の言いたいことなんて全部分かるけど、

・・・だけど、そんなのは癪に障るじゃないか。

それらは必ずしも裕正の正しさを示すものではない。

でもだからといって、その中に私が正しいのを証明してくれるものだって

少しもありはしないんだから。


「僕は君を嫌ってるわけじゃない。それは分かってくれる?」

「じゃあ何で」

「いいから、聞いて」

「・・・・・・・・・」



あの頃の私は、裕正の子供みたいなところが好きだった。

仕事より遊びの方が一生懸命で、休日になると無意味に早起きしてしまうような彼が。

私の得意料理をハンバーグやカレーやコロッケにしてしまった彼が。


今の裕正はあの頃とは違う。

とても大人びていて、私をなだめようとするその口調は

まるで子供をあやす父親みたい。



「僕は、君が嫌いじゃない。だけど好きかどうかと聞かれたら・・・、

 ・・・・・・今は答えられない」

「・・・、」

「僕は君を嫌いになりたくないんだと思う。だから、・・・今の君のそばにはいれない」

「・・・そんなの、」


そんなのは矛盾してる。

好きだからそばにいるのと、嫌いだからそばにいないのと、

その二つが正しいんじゃないの。



好きだからそばにいないなんて、私には意味が分からない。



「こんなの、いつまで続くの」

「・・・君が僕を、嫌いになるまで」

「っ・・・、・・・」



もう今すでに嫌い。


そう言ってしまえば、次に会うのはさよならする儀式を行う時なのだろうか。

薬指の銀色は、私と裕正を繋ぐ鎖の欠片。

ここからのびる見えない糸の先にお互いがいる。

今もまだいる。

だけどその糸は今にも切れそうで、これ以上傷つけないように私は必死になってる。


・・・私は、じゃない。私たちは、だ。


私たちは、ホントはきっとお互いが嫌いじゃない。

なのになぜか一緒にもいられない。

それは単に私たちが不器用なだけが理由なのかも知れないし、

もっと他に重大な理由があるのかも知れない。



「また、・・・今度にしましょう」

「・・・うん。ごめんね、時間とらせちゃって」

「私こそ、・・・じゃあ、またね」


立ち上がった私に、「お金はいいから」と裕正は言った。


「ありがとう」

「またな」

「うん」




嘘を吐くのが苦手な私たちは、

相手が痛むかもしれないことまで隠し通せない。

そのくせ本当のことを正直に話せるほどの

勇気すら持ち合わせない。


だから嫌いだと嘘もつけないし、

好きだと言えばいいのにそれも言えない。




私たちは昔から、似た者同士なのだ。














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